渋谷のポップアップを経て、改めて enrio の「裏側」を曝け出す製作レポ。 第1回の「裁断」を経て、バラバラのパーツになった革たち。 机に並んだそれらは、まだ「材料」でしかありません。
今回お話しするのは、それらを「製品」へと昇華させるための、最もストイックな工程。 革の厚みを整える「漉き(すき)」についてです。

1. 0.1ミリの差が、革製品の「格」を決める
「漉き」とは、専用の漉き機という機械を使って革の裏側を削り、厚みを調整する作業のことです。
一見、地味な作業に見えるかもしれません。しかし、ここには enrio の美学が凝縮されています。
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全体の厚みを整える「ベタ漉き」
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パーツの端だけを薄くする「コバ漉き」
これらを使い分け、0.1ミリ単位で調整していきます。 なぜ、そこまで細かく刻むのか。 それは、「軽さ」と「美しさ」、そして「耐久性」を両立させるためです。
厚すぎればバッグは重くなり、折り返した部分が野暮ったく膨らんでしまいます。 逆に薄すぎれば、数年使っただけで破れてしまう。 その「攻めぎりぎりのライン」を見極めるのが、職人の腕の見せ所です。

2. 豚革という、気まぐれな相棒
特に、私たちが愛している「彩の国黒豚」のピッグスキンは、非常に個性的です。 生きていた時の名残で、場所によって繊維の密度も、柔らかさも、元の厚みも全く違います。
機械の数値だけを信じてはいけません。 回転する刃の音を聴き、削り出される革の粉の色を見、そして何より指先の腹で革の「残り香」のような厚みを感じ取ること。
「この部分は力がかかるから、少し厚みを残そう」 「ここは重なる部分だから、紙一枚分だけ薄く」

3. 見えない場所にこそ、enrio のプライドを
完成したバッグを手にしたとき、皆さんが「漉き」の跡を見ることはまずありません。 それはすべて、パーツの裏側や、縫い目の中に隠れてしまうからです。
でも、持った瞬間の驚くような軽さ。 数年経っても崩れない、凛としたフォルム。 それは、この「0.1ミリの攻防」があるからこそ生まれるものです。
「良いものを作るだけでは届かない」 渋谷で得たその教訓は、私をより一層、この地味で、残酷なほど繊細な工程へと向かわせます。
見えない場所にこそ、嘘のない仕事を。 それが enrio の、そして私のプライドです。

結び:次は「形」を繋ぐ準備へ 厚みが整ったパーツたちは、ようやく一枚のパズルのように噛み合う準備が整いました。 次回は、これらを美しく、そして強固に結びつける「刻印・糊付け・ヘリ返し」などの工程についてお話しします。【下準備編】

