【現場のリアル】傷のある革はどこへ行く?原皮商とタンナーから聞いた「B級・C級原皮」の課題

【現場のリアル】傷のある革はどこへ行く?原皮商とタンナーから聞いた「B級・C級原皮」の課題

先日、いつもお世話になっているタンナー(鞣し業者)さんと原皮商(屠殺場などから生の皮を仕入れて供給する業者)の方々と直接お話しする機会がありました。

そこでテーマになったのが、長年業界が抱え続けている「B級、C級の原皮をどう活用するか」という深い課題です。

私たちが普段目にする革製品は、傷が少なく均一で美しい「A級品」の革が多く使われています。

しかし、元々は生き物だったもの。生きていた頃についた傷やシワ、虫刺されの跡がある「B級・C級」の皮は必ず一定の割合で発生します。

「傷があるから」という理由で市場から敬遠され、行き場を失ってしまう原皮たち。今回は、私たちが命の恵みを扱う中で向き合わなければならない、現場のリアルな課題についてお話しします。

意外な事実。豚と牛でまったく違う「副産物のその後」

「革は食肉の副産物であり、捨てずに活かすのがサステナブル」とお伝えしてきましたが、実は種類によってその「行き場」に大きな違いがあります。

例えば、豚のB級・C級原皮の場合。 豚皮は肥料やゼラチン、コラーゲン原料へと再資源化(レンダリング)するルートが確立されています。革製品として使われなくても、別の形で命を使い切る仕組みが整っているのです。

しかし、牛のB級・C級原皮は違います。 牛の場合、そうしたレンダリングの受け入れ口が少なく、革として鞣されなければ、そのまま行き場を失ってしまうという厳しい現実があります。

「牛の原皮問題」は業界内でも叫ばれていますが、傷のあるB級・C級の牛原皮をどう活かすかという問題は、まさに現場の盲点であり、今もっとも向き合うべき課題だと痛感しました。

「綺麗な革」だけを求めることの矛盾

市場や消費者が「傷ひとつない綺麗な革」ばかりを求めると、必然的にB級・C級の革は余っていきます。

ですが、傷やシワは、その動物が自然の中で生きてきた「生きた証」そのものです。

「命を無駄にせず使い切る」と口では言いながら、見た目の綺麗さだけで選別し、弾かれたものを余らせてしまう。そこには大きな矛盾が存在します。

今、皮革業界に必要なのは、単に綺麗な革だけを消費する文化ではなく、「傷や個性も含めて、命の恵みとして愛せる価値観」を育てていくことではないでしょうか。

捨てずに活かす。これからの「ものづくり」の挑戦

この長年の課題に対して、現場も手をこまねいているわけではありません。
どうやってこの問題を解消しようか。業界も本気で考えています。

傷があるから欠陥品なのではなく、「世界にひとつだけの表情を持つ革」として提案し、製品へと昇華させる。

私たち作り手も、ただ美しい材料を仕入れて縫うだけでなく、こうした業界の課題に正面から向き合い、命を余すことなく使い切るものづくりに挑戦していきたいと考えています。

素材の背景にある「物語」ごと選ぶということ

私たちが日常で手にするものの背景には、必ずこうした現場の葛藤や職人たちの試行錯誤が存在します。

表面的なイメージや見た目の完璧さだけでなく、「素材がどこから来て、どう生かされているのか」というストーリーにまで目を向けてみてください。

1枚の革に刻まれた傷すらも愛おしく思えるような、誠実でもの本質を突いたプロダクトと発信を、これからも愚直に届けていきます。